子どものメンタルヘルス~家族や大人の皆さまへ~
更新日:2024年4月1日
問い合わせ先:地域保健課 地域保健第1係・地域保健第2係
子どものメンタルヘルスを支える
子どもたちのこころは、成長とともに大きく揺れ動くことがあります。ときには、気持ちが不安定に見えたり、何を考えているのかわからなくなったりすることもあります。
そうした状態が正常な成長の中で見られる一時的なものであることも多いのですが、実は背後にこころの病気が隠れていることがあります。
子どもの様子が気になったり、こころの病気が心配になったとき、子どもたちを支えられるのは、身近なご家族や大人の皆さんです。
お子さんのこころの病気の初期サインやこころの病気についての解説、子どものこころと向きあっていく方法について、どんなとき、どうすればいいのか、何が必要なのかをご紹介します。
目次
子どものSOSサイン
こころの病気には、いろいろなSOSサインがあります。そんなサインに気づくポイントや気づいたときの対応方法をご紹介しています。
また、ひきこもりや不登校、リストカットなどの自傷行為、自殺をほのめかすときなど、その背景にはこころの病気が隠れていることもあります。
1.こころのSOSサインに気づく
悩みやストレスが大きくなって、こころがダウンしそうなとき、様々なサインが現れます。とくに、こころのSOSは睡眠、食欲、体調、行動の4つの面に出ることが多いと言われています。
「今まではこんなことなかった」「どうも普段の様子と違う」など、いつもと違うことへの気づきが大切です。次のようなサインが続いているようなら、子どもから話を聞いてみましょう。
こころの病気は、多くの場合、早期に治療するほど回復も早くなるといわれています。子どもの「いつもと違う」サインが続いている場合は、早めに専門家に相談してみましょう。
こころもメンテしよう~困ったときの相談先~(厚生労働省)(外部サイト)
睡眠:よく眠れること、十分な睡眠はこころの健康にとって大切です。
- 布団に入っても、なかなか寝つけないようだ。
- 遅くまで夜更かししている。
- 朝、起きるのがつらそう、なかなか起きられない。
- 睡眠のリズムがくずれている。
- 眠れないと言う。
- 寝すぎる。
食欲:ストレスやこころの病から食欲に影響が及ぶことがあります。
- 食欲がない、食べる量が減った。
- 逆に食べすぎる。
- とくにパンやご飯、お菓子などの炭水化物を欲しがる。
- 急にやせた、あるいは太った。
- 体重をとても気にしている。
体調:こころの病気も、最初は体調に出てくることがよくあります。
- 体がだるそう。
- 疲れている。
- 元気がない。
- 顔色が悪い。
- 腹痛や頭痛、めまい、吐き気などを訴える。
行動:本人よりも周囲が気づきやすいのが行動面のサインです。
- 学校に行きたがらない。
- 家から出ないでひきこもりがちになった。
- 友達と遊ばなくなった。
- 身だしなみにかまわなくなった。
- 無口になった。
- 挨拶をしなくなった。
- 何度も同じ動作や行動をくりかえす。
- 気持ちが抑えられなくなり暴力をふるう。
- 何もしないで長い間ぼんやりしている。
- 表情が変わらず、感情面での反応が少なくなった。
- 話が支離滅裂になった、通じなくなった。
- 独り言を言うようになった。
2.「ひきこもりや不登校」というサイン
子どもが自室に閉じこもって外に出たがらない、学校に行きたがらないといったとき、「ひきこもり」や「不登校」の可能性を考えて心配になるのではないでしょうか。
どちらも、ひきこもりや学校に行っていない「状態」を指す言葉ですが、病気を意味する言葉ではありません。それでも様々な心身の症状を子どもが訴えることがあります。また、ひきこもりや不登校の中には、こころの病気が隠れていたり、それ自体がこころの病気の原因になっていたりすることもあります。
子どもの様子を見守りながら、タイミングを見て、体やこころの状態について子どもと話す機会をもちましょう。
不登校の場合は適応指導教室やフリースクール、あるいはスクールカウンセラーや教育相談所などの相談先があります。本人が相談に行けないときは、不登校児やひきこもりの親の会などに参加し、家族が社会とつながっていることが大切です。
ひきこもり・不登校でよく見られる症状
- 体の症状
発熱、頭痛、腹痛、吐き気、食欲不振、全身倦怠感、めまいなど - 精神症状
不眠、無気力、イライラ、集中力低下、憂うつ感など
ひきこもり・不登校の経過
次のような経過をたどるケースが多く見受けられます。
- 体の症状
まずいろいろな体の症状が現れ、元気がなくなります。 - 精神症状
学校に行けないことへの葛藤や周りからのプレッシャーでイライラしたり、落ち込んだりして、ときには乱暴になることもあります。 - 無気力状態
次第に情緒的には落ち着いてきますが、その後無気力に過ごす時期が続きます。
3.「自分を傷つける」というサイン
ストレスから自分を傷つける行為が、10代から20代を中心とした若い世代にみられます。リストカット、たばこの火を押しつける、ピアス穴を過剰にあけるなどのほか、髪の毛を抜く抜毛症などもあります。自傷のすべてがこころの病気ではありませんが、中には、統合失調症、うつ病、摂食障害、境界性パーソナリティ障害、解離性同一性障害など、こころの病気が重なっていることがあります。
リストカットをしたからといって自殺したいと思っているとは限りません。これらの行為には、自分の体を傷つけることで、精神的な苦痛を和らげようとする気持ちが隠れていることがあります。自傷行為は自殺とは区別して考えることが必要ですが、継続して行われる場合には長期的に自殺につながってしまうことも少なくありません。
自傷行為は、子どものこころがSOSを出している証拠。ゆっくりと話を聞きながら、こころの専門家に相談してみることをお勧めします。
自傷行為について
- 怒り、空虚感、寂しさ、劣等感などの感情が抑えられず、自分を傷つける。
- くりかえし行うことが多い。
- 次第に常習化する。
- 複数の方法や手段で行うこともある。
- 自尊心が低く、自己否定的なことが多い。
- 虐待が原因となる場合もある。
自傷行為を行う子どもに対して
- 自傷行為を責めない。
- なぜ行うのか、そんなことをして何になるのかなどと問い詰めない。
- 精神的ストレスから、自分を傷つける人もいることを伝える。
- 「自分を傷つけたいほど、つらいんだね」など、苦しい気持ちに寄り添う。
- 傷つけたくなったとき、いつでも話を聞く準備があることを伝える。
- 「そばにいる」「一緒に治していこう」と、支えになることを伝える。
4.「消えてしまいたい」というサイン
一人で悩みを抱えてしまうと、思い詰め、自殺を考えることもあります。学校の友人関係の悩みだけなく、うつ病、統合失調症などの病気でも、自殺のリスクが高まります。次のような前兆となるサインが見受けられるかもしれません。
- 自殺をほのめかす、自殺について口にする。
- 消えたい、いなくなりたいと言う。
- 自分は生きている意味や価値がないと言う。
- 生まれてこなければよかったと言う。
- 周りに迷惑をかけていると自分を責める。
- 自暴自棄になる。
- 身の回りのものを片づけたり、人にあげたりする。
- 薬やアルコールを乱用する。
このようなサインに気づいたら、必ず声をかけ、話を聞きましょう。「バカなことを言うな」「何を考えてるんだ」などの言葉は、子どもをますます追い詰めてしまいます。
「心配している、大切に思っている」というあなたの気持ちを伝えること、「消えてしまいたいほど、つらい」という子どもの気持ちを受け止めることが大切です。自殺のリスクが感じられるときは、一人にせず、近くで見守りましょう。
また、自殺のリスクが切迫していると感じるのであれば、速やかに専門家に相談し、どのように対応すればよいかアドバイスをもらうべきでしょう。
こころの病気について知る
10代、20代の若者でもこころの病気はあります。また、若者の場合には、大人とは症状やケア・治療の方法が異なることもあります。
ここでは、若者に多いこころの病気の特徴や治療法、サポートするときのポイントをご紹介しています。
子どものこころと向きあう
子どもの様子が気になるとき、もしかしたら「どうしたの?」「何があったの?」と、問いつめてしまうことがあるかもしれません。しかし、これでは自分の気持ちを伝えたいと思っても、話ができないかもしれません。
まずは、子どもの気持ちや状態を聞くことからスタートしましょう。そのための具体的な方法や避けたいことについて紹介します。
1.まず話を聞いてみる
いやなことや悩みがあるとき、話を聞いてもらっただけで、問題が解決していなくても、気が楽になったという経験は誰にでもあるはずです。とくに、こころに不調を感じているときは、自分でも不安でつらい気持ちでいっぱいです。いきなり「病院に行こう」と言うよりも、まずはそんな不安な気持ちを聞いてあげましょう。
自分のこころの問題について話すのは、とても勇気がいるものです。「こんなことを言って、変だと思われるかも」「こんな私は嫌われるかも」といった、話すことへの不安に配慮して、無理強いせず、話してくれるのを待ちます。
話してくれた時は、「勇気を出して話してくれたんだね」「つらいことを話してくれてありがとう」とねぎらうことも大切です。
思春期は、体の変化や性への目覚めで、自分でも自分がよくわからない時期です。大人への曲がり角に差し掛かっているため、自然と気持ちも揺れ動きます。大人への反抗心も芽生え、悩みがあるからといって、なかなか素直に心を開いてくれないこともあります。
それでも「気にかけている」「心配している」ということを丁寧に根気よく伝えましょう。比較的落ち着いているときを見計らって、「最近の様子が心配なの、よかったら話してくれない?」と、声をかけてみましょう。
話をすることのよさ
- 感情を吐き出すことができ、モヤモヤした気持ちがすっきりする。
- 話を聞いてくれる人がいるという安心感を得られる。
- 真剣に話を聞いてもらえることで自尊心が高まる。
- 人に話すうちに、自分の問題が客観的に見られるようになり、どうすればよいのか見えてくることもある。
- ストレスへの対処能力が増す。
話を聞くときに知っておきたいこと
- 話してくれないときは、無理強いはしない。
- 話してくれなくても、あきらめず、「いつでも聞くからね」と伝え、話してくれるのを待つ。
- 自分の弱い部分や不安について人に話すのには抵抗がある。
- 話してくれてありがとうという姿勢で聞く。
2.話を聞くときのポイント
自分が悩みを抱えているとき、どんなふうに話を聞いてもらいたいですか? アドバイスをされるよりも、まずはただ「そうなんだ、それは大変だったね、つらかったね」と受け止めてもらいたいのではないでしょうか。
家族や大人として、心配な気持ちや「○○すべき」という意見、「○○してほしい」という考えを伝える前に、まず、じっくりと子どもの気持ちに共感し、受け止めることが大切です。
具体的な声かけの例
- 「学校に行きたくないほど、つらいんだね」
- 「最近、元気がないように見えて、心配なの」
- 「頭痛や腹痛が多いみたいね。どうしたのかな。どんな調子かもっと話してくれない?」
- 「あまり家族と話をしなくなったけど、お母さんはあなたと話がしたいわ」
- 「お友達とケンカすることが多くなったけど、何かあったのかな? よかったら話してくれないかな?」
- 「そうか……○○なんだね」と、子どもの言葉をくりかえす。
子どもが話し始めたら、まずは聞き役に徹します。自分の考えや意見を差しはさむことや、それはダメだ、違うなどと否定することは避けましょう。
子どもはどんなふうに感じているでしょうか、どんな気持ちでいるでしょうか? 子どもの気持ちに共感するとは、子ども自身の感じ方を理解する姿勢で聞くことです。そして、子どもの気持ちをしっかり受け止めることが大切です。自分の気持ちを理解して話を聞いてくれる相手には、信頼してこころを開いてくれるはずです。
こころの不調が感じられる場合、病気はきっとよくなるということを伝えることも大切です。また親や周囲の人間がついている、一緒に乗り越えようというメッセージも大きな支えになります。
「I(アイ)メッセージ」で話すと気持ちが伝わりやすい
声をかけるときは「I(アイ)メッセージ」で話すことを意識するとよいでしょう。「I(アイ)メッセージ」とは、「あなた」ではなく「私」を主語にして話す方法です。
「あなた」を主語した言葉は、たとえば、「あなたは最近、学校を休んでばかりね」「あなた、成績が下がったわね。どうしたの?」という具合です。相手を非難しているように響きやすいでしょう。
一方、実際に起こっていることに対して、「私」を主語に素直な気持ちを伝えると、相手を責めるのではなく、自分も一緒に考えようとする姿勢が伝わります。
たとえば、「最近、学校をよく休むので、(私は)あなたのことがとても心配なの」「成績が下がっているので、(私は)何かあったのかなと、気になっているの」と伝えれば、本人が受ける印象はずいぶん変わるでしょう。
答えやすい質問の仕方を
質問するときには、「はい」「いいえ」のどちらかで答えなければならない質問や回答を迫る質問をすると、本人は責められている、強要されていると感じやすいでしょう。たとえば、「宿題はしたの?」「明日の用意はできているの?」といった質問は、プレッシャーになりやすいでしょう。
一方、「どんなふうに思う?」など、答え方が限定されない質問のほうが、相手も話しやすくなります。「WHY?」よりも「HOW?」で聞きます。たとえば「○○については、どう?」「○○のときは、どんな感じだった?」という聞き方です。
3.避けたいこと
悩みでいっぱいいっぱいになっている自分、こころが沈んだ自分について話すことは、とても勇気がいることです。ですから、「話してくれてありがとう」ということを伝えたいものです。逆に、次のようなことは避けましょう。
避けたいポイント
◆聞くときの態度
- 何かをしながら話を聞く。
- 視線を合わせない。
- 腕組みをする。
- 先入観をもって聞く、聞く前から結論を決め込む。
◆感情的になる
- 動揺して大きな声を出す。
- 怒るなど、感情的に応答する。
- 哀れんだり、同情しすぎる。
◆尊重しない、否定する
- 無理に話をさせる。
- 子どもの言うことを軽視したり、否定する。「そんなはずはない」「違う」
- 小言を言う、叱る、説教する。
- 話しを遮って、自分の意見や気持ちを言う。
- 自分の価値基準で判断する。「何を言っているんだ、とんでもない!」
- 原因を追及する。「いったいどうしてなんだ? なぜなんだ?」
こころに不調を感じるとき、子ども自身も不安に感じているはずです。そうでなくても、自意識に芽生えて敏感になっている多感な時期です。「最近、どこか様子が違う」などと指摘されたら、ますますこころを閉ざして「そんなことない」と意地を張ってしまうかもしれません。
変化や問題を指摘することよりも、一緒に考えようという姿勢が大切です。
関連・相談サイト
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